ドイツ 自営業者に大きな負担となる健康保険料

ドイツ 自営業者に大きな負担となる健康保険料

今年から一昨年の収入に応じて
健康保険料がぐっと上がってしまったのを機に、
自営業者にとってのドイツ健康保険について
見直してみることにしました。

ちなみにドイツで企業に就職する場合には
ドイツの法定健康保険に加入する義務があります。
(旅行保険は×)


最低査定収入額の変更とその背景

 

まず基本情報として自営業者は、
健康保険に加入することが義務となっており、
法定健康保険の場合
健康保険に平均 14%、
子供がいない場合の介護保険に 2.8%、
子供がいる場合は 2.55%、
さらに保険料として 1.1% を負担します。

ネットで検索すると自営業者の収入に応じて
保険料を算定してくれるサイトがあります。
どの保険会社でも金額にそれほど差はないので、
一例としてTechniker Krankenkasseのページを
載せておきます。

https://www.tk.de/service/app/2004108/beitragsrechner/selbststaendigeRechner.app

例えば毎月の収入が1500ユーロで
23歳以上、子供がいる場合の
保険料は介護保険等全て含めて
約280ユーロ、
収入が3000ユーロの場合は
約550ユーロとなります。

会社員の場合、雇用者が半額負担をしてくれますが
自営業者は全額自己負担となるので
被雇用者だった人には余計に
高い!と感じるのではないでしょうか。

2018年までは最低査定収入額が
2282,50ユーロ、
最低保険料が417ユーロだったのですが、
多くの自営業者はこの高額の支払いをする余裕がなく、

2022年現在では
最低査定収入額1096,67ユーロ、
最低保険料が153,53ユーロ
となっています。

その背景として
健康保険会社は
保険料の延滞をどんどん増やしており、
2018年の統計では 61 億 5000 万ユーロ
という新記録に達しました。
健康保険会社の収入不足は、
年間 7 億 5000 万ユーロと推定されています(2018)。

以前は、自営業者は標準よりも高所得者である
と見なされていました。
しかし一方で、従業員を持たず、
収入がほとんどない自営業者もたくさんいます。
ドイツでは、就業者の約 10% が自営業者、
その内ほぼ 60% が個人経営者であり、
IT ワーカーやコンサルタントとして
高収入を得ている人もいれば、
看護師、保育士、タクシー運転手、市場の露天経営者
として収入が少ない人たちもいます。
現在、130 万人を超えるフルタイムの自営業者が
法定健康保険に加入しており、
年々増加傾向にあります。


法定健康保険とプライベート健康保険

 

あまりにも保険料が高くなってしまったので、
比較検討のため今までは考えていなかった
プライベート保険について
調べてみました。

が、下記のようにいろいろと不利になってしまうことがあり
断念。

・まだ若くて持病がなければ保険料は安いが、
 もう若くないし、年齢とともに金額も上がっていき、
 高齢になって仕事を辞めても高い保険料がかかってしまう。

・プライベート保険から法定保険に戻ることができない。
(社会保障拠出の対象となる雇用関係を結んだ場合にのみ、
法定健康保険に切り替え可。
ただし、所得が法定保険の限度額以下である必要がある)

・法定保険の場合、子供と
 パートナーも無職、あるいは低収入であれば
 家族保険に加入可だが、
 プライベート保険はそれぞれが加入、
 支払いする必要がある。

ちなみに被雇用者の場合は年収が
64.350ユーロ以上、
あるいは月収が
5.362,50ユーロ以上、
の場合にのみ加入可です。
プライベート保険が
「金持ち保険」
と言われるゆえんですね。
自営業者の場合は、
そういった制限はありません。

どちらの保険にするべきか検討する場合に
注意する点として、

法廷保険はまず間違いを犯すことがなく、
追加サービスと低額の追加支払いを除けば
保険会社間の差異はほとんどありません。

何か変更があった場合も
後から容易に変更可能です。

プライベート保険の場合、
どれを選択するかは、
希望するサービス パッケージと
発生する月々の費用に大きく依存します。
また法定健康保険への再切り替えが基本的に
できないことも大きく検討すべき点です。

多くの保険会社が
意思決定に役立つサービスの概要を
オンラインで提供しています。
連邦保健省も、その Web サイトで
いくつかのリソースを提供しています。
 リサーチする場合、
中立的な情報源を使用して、
選択する保険会社について
できるだけ多くの情報を
収集することがまず重要となります。

 

私の健康保険加入状況の推移

 

私の場合失業から起業することを決めたため、
失業保険をもらっている間と
起業することを決定後
起業支援金(Gründungszuschuss)を
支給してもらっている間は
そこから保険料支払いとなりました
(6か月+9か月追加支援金)。

その後はまだ収入が少なかったので
夫の家族保険に加入
(私の加入している保険会社では
月収470ユーロまで加入可(2022年現在)。

約一年後ぐらいにその額を超えてしまったので
任意で同じ保険会社に自営業者として
改めて加入し、
最初の2年は最低保険料で済みましたが、
収入が増えたため
保険料ががつんと増えてしまい、
現在に至ります。

 

健康保険料の負担を減らすには?

 

あまりにも高い保険料に
いい対策法はないかとネットで調べてみましたが、
書いてあるのは要は
「とにかく払えるだけ稼げ!」
とういうことで(笑)、
収入に応じた保険料を
減らすことはできないので、
アドバイスとして

・コスト削減
・優良顧客の新規開拓等による収益増加。
・十分な収入と保険料を問題なく支払うために時給に換算すると
 どのくらいの金額が必要となるのか計算してみる。

といった至極当たり前のことが書いてありました・・・。

ちなみに前回の所得税査定時と比べて
利益が25%以上急激に落ち込んだ場合、
自営業者は条件付きで健康保険と介護保険の負担を
減らす申請をすることができます。

たまになんだか保険料や税金を
ちゃんと払い続けるために
働いているような気がして
悲しくなってしまう時がありますが、
結局はコツコツとがんばっていくしかないんでしょうね。

 



ドイツで働く 子供のための病欠日数が2020年末まで10日プラスになりました

ドイツで働く 子供のための病欠日数が2020年末まで10日プラスになりました

コロナ禍による病欠日数の増加

コロナ禍で熱が出たり、
咳が続いたりすると幼稚園や学校を休まないといけないため、
子供が欠席する機会が増えてきています。

そのためドイツ政府は2020年8月25日(火曜日)に

今年いっぱい(2020年)まで仕事を持つ親が12歳以下の子供の病気のために
仕事を休める日数を10日間増やすことを決議しました。

※2021年も引き続き同日数が適応されます。

下記の表は今までの日数と増加後の日数をリスト化したものです。

子供の人数通常2020年末まで
一人20日30日
二人40日50日
三人以上50日60日

※夫婦は上記の日数を50:50で分けます。一人親の場合はそのままの日数になります。


子供のための病欠とは


働く親が子供が病気の際に祖父母などのヘルプがない場合
仕事を休むことは法律で認められています。

一回に最長5日まで休みを取ることができます。
公務員の場合は休んだ日に対しても給料が支払われますが、
ほとんどの企業の雇用契約書には子供のための病欠を有給にするとは記載されていません。


支払うのは雇用主ではなく健康保険会社になり、
児童病欠給付金(Kinderkrankengeld)が支払われます。
病欠一日目に小児科医の診断書をもらってください。
ただしプライベート保険の場合は支払われません。


児童病欠給付金の申請方法

  • 小児科医で診断書をもらう
  • 診断書の表側に子供の個人情報と欠席日数が印刷されています。申請者は裏側に名前、住所、生年月日、保険契約番号、銀行情報を記入します。
  • 「雇用契約書に手当てが支払われると記載されていない」にチェックを入れ、該当する場合は一人親かどうかにもチェックを入れます。
  • サインをし、健康保険会社に郵送します。雇用者は保険会社から郵送かメールでコピーを受け取ります。

子供を持つドイツ人のワークライフバランス


このようにドイツでは子供が病気になって仕事を休む場合、
有給休暇とは別に休みが取得できるようになっており、
子供がいても日本より働きやすい環境があります。


子供たちが幼稚園に通っていたころ、
お迎えは14時か16時だったのですが、
シュタイナー幼稚園だったのもあって
圧倒的に14時にお迎えの子供が多く、
お迎えする人の40%ぐらいがお父さんで驚いたのを今でも覚えています。
日本じゃありえない光景ですよね。


本当は一人一人のお父さんになぜ14時にお迎えが可能かアンケートを取りたいくらいだったのですが、
一人のお父さんに聞いてみたところ彼は弁護士で、
上司がワーキングママなのもあって理解があり、
可能であれば在宅勤務もOKで、
14時にお迎え後は子供の相手をしっかりして、
また子供が寝てから仕事をするとのことでした。
奥さんも働いているので交代でやっていました。

仕事も家事も育児もどれも中途半端になってしまって、
悩んだり、ストレスを抱えてしまっている方が多いと思いますが、
うまくバランスを取って行けるといいですよね。

私はおばちゃん化(年の功)とドイツにいるおかげで
だいぶ肩の力が抜けて前よりはさじ加減がうまくなったように思います。

ドイツと日本 働き方の違い

ドイツと日本 働き方の違い

ワーママが働くなら日本?ドイツ?

少し前に日本人のママ友とランチをして働くなら日本とドイツどっちがいいか、
という話になり彼女も私と同じ考えで間髪入れずに

「絶対ドイツ!」

と答えました。
なぜならドイツの方が子供がいても再就職しやすいし、
働きやすいからです。

ちなみに私が再就職をしたのは6年半のブランク後の41歳、
パートタイムで下の子が2歳前の時でした。

日本だと子供のいる女性が再就職したい場合、
いい大学を出ていても面接にも呼んでもらえない、
という話を何度か耳にしました。

 

ドイツの方が働きやすい理由

ドイツの場合、
もちろん経験や能力によりますが、
40代でも再就職のチャンスはしっかりあると思います。

ドイツは社会保障がしっかりしているので
(その分税金は高いですが→いつも言っていますが(笑))、
働く人がすごく守られているのを感じます。

日本と違う規則をいくつか挙げてみますね。

 

有給休暇とは別に病気休暇・子供のための病気休暇がある

なんといっても最初に驚いたのが、
有給休暇と病気休暇(有給)が別であるということ。

例えば風邪を引いたとして会社を休み、
通常3日目からは医師の診断書が必要になるので病院に行きます。
そこでお医者さんに
「じゃあ今日から金曜日まで5日間会社を休んでください。」
と言われて診断書をもらうと、
月曜日の時点でその週まるまる会社を休むことがもう確定するのです。

そうなると薬で無理に直そうとしたり、
まだ体調が悪いのにがんばって会社に行こうとする必要がないので精神的に楽ですよね。

また休暇中に例えば盲腸になって入院した場合、
診断書を提出すれば有給休暇から病気休暇を引いた有給休暇日数が戻ってきます。

日系企業に勤務していた時に実際に同僚がそうなり、
日本から来たばかりの社長に有給休暇が戻る話をしたところ、
最初は冗談だと思われて信じてもらえませんでした。

残業時間を休暇に変えることが可能で(Freizeitausgleich)、
退職の際に有給休暇がまだ残っていて消化しきれない場合は給与に変えることもできます。

 

子供が病気の場合、
医師の診断書があれば通常の有給休暇とは別に有給で休暇が取得できます
(健康保険会社による支払い。基本年間子供一人につき10日まで。夫婦で20日)。

詳細はこちらの記事で。

[blogcard url=”http://doitsudejiei.de/kodomo-byouki/”]

 

もっと対等な立場にある雇用者と被雇用者

育児休暇は3年まで取得できますし、
またパートタイムであっても正社員としてフルタイムと同じような労働条件と権利が発生します。

派遣社員であっても正社員と同じような条件で雇用することが義務づけられています。
そして休暇を取る際も子供がいる社員が子供の休みに合わせて優先的に取得するようになっています。

また雇用者と被雇用者がもっと対等な立場にあるように思います。

就職活動からもうそれは始まっていて、
給与額の希望は必ず聞かれますし、
前職での収入に見合った給与をもらえるよう交渉するのはとても大切なことです。

私は最初にドイツで就職する際に給与希望額を聞かれ、
「いくらでもいいので働かせてください!」
と言ってしまい、
夫に
「それは一番言ってはいけないことだよ。」
と後で叱られてしまいました。

なので二回目の就職活動の時にはしっかり希望額を言うことができました。

契約の前には契約書をしっかりと読み、不明な点や変更希望があれば話し合います。

また年に一回人事との面談があり、
給与アップや労働条件の変更を希望することができます。

こういったことは不慣れでしたし、
日本人はついつい謙遜してしまって自分はこれだけのことができている!
と自画自賛するのが苦手なので、
面談の前にはかなり気合を入れる必要がありましたが、
毎年少しずつですが給与アップをしてもらうことができました。

知れば知るほど日本とドイツの労働環境には大きな違いがあることがわかり、
雇用側も被雇用者もその内容を把握しておく必要があるのを感じます。

日系企業の場合人事担当が駐在員で数年ごとに変わることもあり、
ドイツの労働規則をまだよくわかっておらず誤解が生じ問題が起きてしまうこともあります。

自分の休暇権利などを主張するのはなかなか難しいところではありますが、
こちらから上手く説明して理解してもらうことが大切になってくると思います。

 

 

ドイツで外国人ワーキングマザーであるということ

ドイツで外国人ワーキングマザーであるということ

ワーキングマザーの長所

前にも書いたようにある程度子供が大きくなってから再就職しようとするといろいろな壁にぶつかります。

子供がいることで十分に働いてもらえないのではないかと企業は考えがちですが、
逆にワーキングマザーほどコストパフォーマンスが高い存在はないと思うんです。

子供のお迎えがあるため必ず決まった時間に退社しなければいけないので、
だらだらと残業をするのではなく、
与えられた時間内で最大限のパフォーマンスをしようとする方は多いのではないでしょうか。

また仕事に家事、育児と忙しいお母さんたちはマルチタスキングですし、時間管理も上手です。

私は再就職後また働けることをありがたく思い、
子供がいることがなるべくマイナス要因にならないように、
また会社の期待にできる限り答えたい、
と思って働いていました。

再就職した最初の頃はほんとに必死で、
トイレに行くタイミングも逃してしまうほどでした。

6年半のブランクは不安でしたが、
思った以上にスムーズに復帰出来ましたし、
出産し、子育てをしていることが間接的に仕事に役立っていることも多いと思います。

何しろ世の中で一番言うことを聞かない子供を毎日相手にしていますから、
少々のことでは腹も立ちませんし、
考えも柔軟になっています。

 

ドイツで外国人であることの短所

またドイツで外国人(アジア人)であるということをプラスに感じることが残念ながら今までなく、
むしろマイナスになることが多かったように思います。

比較的オープンな我が街でも差別は多少はありますし、
コロナ禍の初めの頃はアジア人差別の話をたくさん聞きました。

実際私も嫌な目に合い、
思った以上に傷ついている自分がいて
(しばらく引きずっていました)、
差別がどれだけ人を傷つけるかを改めて痛感しました。

 

マイナスをプラスにしていこう!

ドイツ語がほぼ話せない状況からドイツ生活が始まり、
現在自営業ができるところまで来て、
いじけた分だけ、涙した分だけ
今こそ外国人であることをしっかりプラスに生かして働いていきたい
(お金をしっかり稼ぎたい!)と強く思っています。

長い年月と経験を経て得た日本とドイツ両方の言葉と文化、
習慣が理解できること、
どちらの立場にも立てるということ、
またドイツでの職務経験が今実を結んでいると感じています。

外国人のママ友(彼女も自分の国から海外への輸出業をしています)
にその話をしたところ激しく同意してくれました。

彼女はアフリカ圏の出身で、
日本人の私よりも遥かに苦労しているので思うところがもっとあるんだと思います。
自分の家族になかなか会えたなかったり、
電車の中で
「あなたはこの国にいていい人なんですか?」
といきなり見ず知らずの人に身分証の提示を求められたり・・・。
しんどいことがあると彼女のようながんばってる友達のことを思い出して自分を励ましています。

ワーキングマザーであることしかり、
外国人であることしかり、
人間は足かせがあったほうが
「やってやる!」
と奮闘するものなんじゃないか、
と思う今日この頃です。