ドイツ語のことわざ⑧ ドイツ語になったフランス語  Gallizismus

ドイツ語のことわざ⑧ ドイツ語になったフランス語 Gallizismus

今日のことわざはまずはこちら。

Ich verstehe nur Bahnhof. 

直訳:私は駅しか分かりません。
→物事を理解できない、聞き取れない。

一説によるとこの表現は第一次世界大戦中に
兵士の間で流行ったと言われています。
戦場へ行かなければならない兵士にとって、
戻ってくる場所はまず、
故郷の駅でした。
駅以外に帰る場所は考えられない、
という固い信念があったため、
自分が考える範囲外のことは理解できない、
という意味合いで“Ich verstehe nur Bahnhof.”
と言うようになったそうです。


戦争の話と言えば、
19世紀にフランスがドイツに侵攻したと同時に、
いろいろなフランス語がドイツ語の中に入ってきました。
両国の微妙な歴史関係を考えると
私には意外な程に、
今でもドイツ語ではフランス語が多く使われていますね。
フランス語を語源とする言葉が、
ドイツ語に浸透することをGallizismusと呼ぶそうです。

例えば、

Portemonnaie→お財布

Engagement→社会貢献

Abonnement→定期購読、定期購入

Bonbon →飴

Chef→上司、ボス

などがあります。

私が一番面白いと思ったドイツ語化したフランス語は
ドイツ人の友人に教えてもらった

’Fisimatenten‘という俗語表現です。
馬鹿げた事、ふざけたこと、
という意味で、
一説によると19世紀にフランスがドイツに侵攻した際に、
フランスの兵隊たちはドイツ人の娘さんたちを誘う時に、
フランス語で

 ‘Visitez ma tente ‘
→僕のテントにおいでよ。
あるいは

‘Voici ma tente ‘
→あそこに見えるのがぼくのテントだよ。
と言いました。
テントを訪れるために出かけようとする娘さんたちに
フランス語のわからない母親たちが、

‘(Mach) Keine Fisimatenten!
→馬鹿なことをするのはおよしなさいね。
と忠告したことから始まったそうです。

あるいは夜勤の警護から逃れるために、

‘visite ma tante‘
→叔母を訪ねます。
と言い訳したことから始まったとも言われています。


一つの文が一つの単語になっていることが
まずおもしろいですし、
言葉が変化してドイツ語化し、
全く違った意味になっているところも興味深いと思います。
また日本人にとっては「てんてん」という言葉の響きも
なんだかかわいらしいですよね。


今回でひとまずドイツ語のことわざは終了となりますが、
簡単な表現が多いと思いますので、
明日からぜひ機会があれば使ってみていただけると嬉しいです。
きっと外国人の方が話す日本語の四字熟語のように、
ドイツ語がうまく聞こえること間違いなしです!

ドイツ語のことわざ⑦ 身の回り編

ドイツ語のことわざ⑦ 身の回り編

食べ物の次は身の回りにあるものを使った表現を見てみましょう。



In die Hose gehen. 


直訳:ズボンの中に行く
→失敗する。

例:Die Generalprobe war voll in die Hose gegangen. 
リハーサルは完全に失敗に終わってしまった。

読んで字のごとく、
トイレに行くのが間に合わず、
ズボンに粗相をしてしまうということですね。
物事が思ったように、あるいは期待していたように
進まなかった時に使います。



Jacke wie Hose.  


直訳:ズボンのような上着。
→五十歩百歩。

例:Das ist Jacke wie Hose, beides reizt mich nicht.

どちらも五十歩百歩で、私には魅力的ではありません。

17世紀以降使われてきたこのことわざは、
近世では同じ生地からジャケットとズボンを
仕立てていたということに由来します。
昔は2つの衣服の生地には違いはなく、
ジャケットは短くしたスカート、
あるいはコートで作られ、
ズボンは元々はタイツでした。



Papier ist geduldig.  



直訳:紙は辛抱強い。
→印刷されたり書かれているものが真実とは限らない。

古代ローマの作家であり政治家でもある
Cicero (紀元前106-43) の手紙には、
「手紙は赤面しない」という意味の
“Epistola non erubescit” の文章が書かれていました。
手紙は羞恥を知らず、恥じらいも知らない、
という洞察から、紙は特に辛抱強いということわざになりました。

「ペンは剣よりも強し。」ではないですが、
文房具は強いものが多いんですね。

ドイツ語のことわざ⑥ 食べ物編

ドイツ語のことわざ⑥ 食べ物編

 

今回で食べ物編は最後になります。


Kümmere dich nicht um ungelegte Eier.

 

直訳:まだ産まれていない卵を気にかけるな
→捕らぬ狸の皮算用

このことわざはおそらくマーティン・ルーサー
の言葉だと言われています。

似たような表現に

Man soll die Rechnung nicht ohne den Wirt machen.

直訳:主人なしに請求書を切るな

 

Verkaufe das Fell nicht, bevor du den Bären erlegt hast.

直訳:クマを仕留める前に毛皮を売るな

があります。

 

Wein auf Bier, das rat’ ich dir. Bier auf Wein, lass es sein.

 

直訳:ビールの後にワイン、これはお勧め。
ワインのあとにビール、これはやめといたほうが。

→同じようなものでも、うまくいくものとそうでないものがある。

このことわざはおそらく中世に由来します。
当時ビールは下層階級の飲み物で、
 ワインは貴族が飲むものでした。
ワインを飲む人の仲間入りをした人、
つまり貴族は、再び下の階級に降りてはいけない、
という意味が込められているようです。


食べ物を使った表現はやはりかなり沢山ありますね。
日本とは食べるものが違うので、
日本語の表現とはかなり異なっていることがよくわかったと思います。

ドイツ語のことわざ⑤ 食べ物編

ドイツ語のことわざ⑤ 食べ物編

 

今日のドイツ語のことわざは前回に引き続き食べ物を使った表現です。

Alles in Butter

直訳:すべてバターの中。
→すべて大丈夫!

他の多くのことわざのように、
このフレーズの由来も中世から来ています。

当時、とても高価だったグラスはアルプスを経由して
イタリアからドイツに運ばれていました。
残念なことにほとんどのグラスは馬車の揺れで
すぐに割れてしまっていました。

そこである賢い商人がいいアイディアを思いつきました。
彼はグラスを樽に入れ、
次に溶かしたバターをその上に注ぎました。
バターが冷えて固まることによって、
グラスも樽の中で固定されるというわけです。
樽が馬車から落ちてしまっても、
ガラスは無傷のままでした!

バターの中にあるから = すべて大丈夫!
というわけです。


同じような意味をもつことわざに

Alles im grünen Bereich!

直訳:すべてグリーンゾーンの中。
→すべて大丈夫!

があります。

 

um den heißen Brei herumreden. 


直訳:熱いおかゆの周りをぐるぐる回る。
→回りくどくものを言う。はっきりしない。

例)Jetzt red’ nicht um den heißen Brei herum und sage mir, worum es eigentlich geht!
(くどくど言わないで何のことかはっきり言って!)

このことわざは

wie die Katze um den heißen Brei schleichen.

直訳:猫がおかゆのまわりをうろうろするように
という古い口語表現から発展したものです。

猫は猫舌なのでおかゆの周りをあちこちとうろちょろし、
おかゆの一番冷めているところを探します。
このフレーズはすでにマルティン・ルターによって文書化されており、
シラーとゲーテの作品の中でも使われています。

 

Der Apfel fällt nicht weit vom Stamm. 

 直訳:   りんごは幹から遠いところには落ちない。
→蛙の子は蛙

英語でも同じ表現をしますね。
説明するまでもないと思いますが、
りんごの木の枝から地面に落ちるりんごは、
決して木の幹から遠く離れて見つかりません。
子供の性格や好みもしかりで、
それは自分の両親の特徴に似通ることがよくあります。

ドイツ語のことわざ④ 食べ物編

ドイツ語のことわざ④ 食べ物編

前回は動物が出てくることわざでしたが、
本日は食べ物を使った表現です。

Das ist nicht mein Bier. 

直訳:これは私のビールではありません。
→これは私の問題ではない。


Es geht um die Wurst! 

直訳:ソーセージのために!ソーセージが重要!
→大事な決着をつける時や、勝負に出る時に使う表現。

例)Heute spielt Deutschland gegen Frankreich. Es geht um die Wurst!
(今日の試合はドイツ対フランス。大事な試合だ!) 


さすがドイツを代表するビールとソーセージ、
どちらも大きな存在として使われていますね。

二つ目の表現は昔、
地元のお祭りでパン食い競争ならぬソーセージ食い競争や、
ソーセージ釣り競争などが催されたことに由来していて、

ソーセージは田舎では高価な商品だったので、
そのまま比喩表現として現代に至ったそうです。

ドイツ語のことわざ③ 動物編

ドイツ語のことわざ③ 動物編

今日のドイツ語のことわざは前回に引き続き動物を使った表現です。

Ein Spatz in der Hand ist besser als die Taube auf dem Dach.  

直訳:手の中の雀は屋根の上の鳩よりも良い。
→遠くの良いものより近くの劣ったもののほうががいい。

高嶺の花を狙うより、自分の身の丈に合った相手を選ぶ方がいい、
あるいは大金持ちを夢見るより、今のつつましくも暖かい家庭を大切にするべきだ、
といったところでしょうか。

Wenn der Reiter nichts taugt, ist das Pferd schuld.  

直訳:騎手の役立たずは馬の責任。
→責任転嫁。

自分がミスをしておいて、
「この機械、チョー使えな~い。」
とか、
「ちょっと○○さん、しっかりしてくださいよお。」
と人のせいにしたりする人、
いつの時代にもいますよね・・・。


ドイツ語のことわざ② 動物編

ドイツ語のことわざ② 動物編

今日のドイツ語のことわざは動物に関するもの2つです。

Ich habe einen Frosch im Hals.

直訳:喉にかえるがいます。
→ガラガラ声です、という意味になります。
お医者に行って症状を説明する時などに役立つフレーズですね。

Ich habe Schmetterling im Bauch.

直訳:お腹の中に蝶を飼っています。
→恋をしている、恋に落ちる
似たような文章でも、体の部位と生き物の種類が違うと意味や雰囲気がこんなにも違ってくるんですね。
確かに蝶がいたらお腹の中は常春でいつも幸せな気分でいれそうです。